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住宅購入は大きなお金が動くため、国の経済対策でも重要な位置づけとなっており、さまざまな税制優遇策があります。
今回は、もっとも有名な「住宅ローン控除」と買い替えの関係について解説します。
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弊社へのお問い合わせはこちら買い替えでも住宅ローン控除は利用可能?適用条件とは
住宅ローン控除とは、最大10年間(長期優良住宅の場合は13年間)にわたり、年末のローン残高の1%が所得税から控除される住宅取得者向けの税制優遇です。
税額や控除期間によっては最大500万円ほどの節税が可能なこの制度は、買い替え先の住宅でも利用できるのでしょうか?
住宅ローン控除の適用条件
まずは住宅ローン控除の適用条件を確認してみましょう。
●取得後6か月以内に入居し、その年の12月31日時点で居住している自宅の住宅ローンであること。
●金融機関や住宅金融支援機構からの借り入れであり、返済期間が10年以上であること。
●住宅の延べ床面積が40㎡以上であること。(令和3年度の改正により50㎡以上から40㎡以上に緩和)
●合計所得金額が3,000万円以下の個人であること。(ただし、40~50㎡の住宅の場合は1,000万円以下)
●居住を始めた年と、その前の2年間、及びその後3年間の合計6年の間に、住宅の譲渡所得の特別控除または課税の繰り延べの特例の適用を受けていないこと。
●控除額は最大で年間40万円、控除期間は一般住宅で10年間、長期優良住宅で最大13年間。
このように、住宅ローン控除自体には適用の回数制限がありません。
そのため、マイホームで住宅ローンを組めば、何度でも利用が可能です。
ただし、住宅ローン控除以外の特例とは併用できないため、買い替えの場合はもっとお得な特例を利用できる可能性があるのです。
買い替え前に注意したい住宅ローン控除と併用不可な特例について
住宅ローン控除には回数制限がないため、買い換え先の住宅でも適用を受けることができます。
しかし、買い替えの前後6年間に「譲渡所得」に対する特例を受けていた場合は併用できない決まりになっています。
つまり、元の自宅が取得費よりも高く売れたという場合には、譲渡所得税が発生するため、住宅ローン控除ではなく他の特例の適用を受けたほうがお得な場合もあるのです。
3,000万円特別控除
自宅を売却した時に出た譲渡所得(売却価格-取得費-譲渡費用)には、所有期間が5年以内の「短期譲渡所得」には39.63%、所有期間5年以上の長期譲渡所得には20.315%の譲渡所得税が課税されます。
3,000万円特別控除の特例は、この譲渡所得から最大3,000万円を控除できるという制度です。
3,000万円の譲渡所得に対する短期譲渡所得税額は1,188万9,000円、長期譲渡所得税額は609万4,500円となり、最大でこの額が節税できることになります。
この特例は住宅ローン控除と併用できないため、どちらがお得かをシミュレーションする必要があります。
10年超所有軽減税率の特例
所有期間5年以上の長期譲渡所得に対する∂課税税率は20.315%ですが、所有期間が10年以上の場合、6,000万円までの譲渡所得については14.21%に軽減されるという特例です。
6.105%もの税率の軽減が受けられことになり、最大366万3,000円の節税が可能です。
6,000万円超の部分については、長期譲渡所得の20.315%の税率が適用されます。
この特例は3,000万円特別控除と併用が可能ですが、住宅ローンの控除とは併用できません。
買い替え特例
「特定の居住用財産の買い換えの特例」は、自宅を買い替えたときに、元の自宅の売却価格よりも高額な住宅に買い替えた場合、元の自宅で発生した譲渡所得の課税を次回の売却時まで繰り延べられる特例です。
その他にも細かい適用条件がありますが、次に買い換える予定がない人にとってはメリットの大きい特例です。
こちらも住宅ローン控除とは併用できない決まりになっています。
譲渡損失の損益通算・繰越控除は併用可能
住宅ローン控除と併用できない特例を3つご紹介しましたが、併用できる特例もあります。
それが「譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例」です。
買い替える前の自宅の取得費よりも売却価格が少なかった場合、損失が発生してしまいますが、その損失額は、給与所得などと損益通算することができます。
また、損失が大きく1年では損益通算しきれない場合、最大3年には渡って繰越控除を受けることができます。
これは自宅を売却して損をしてしまった方のための特例であるため、 住宅ローン控除とも併用が可能です。
買い替え時のシミュレーション!住宅ローン控除と3,000万円特別控除はどちらがお得?
住宅ローン控除は他の特例と併用できないことはわかりましたが、結局はどちらがお得なのでしょうか?
買い替え特例を利用する場合は、節税額が住宅ローン控除で控除される税額よりも大きければそちらのほうがお得と言うことになります。
3,000万円特別控除の場合は、「譲渡所得がいくらか」「住宅ローン控除で控除される税額がいくらか」によって変わるため、具体的なシミュレーションが必要になります。
ここでは、10年以上住んだ自宅の買い替えであると仮定して、譲渡所得が4,000万円の場合、3,000万円の場合、1,500万円の場合でシミュレーションしてみましょう。
なお、買い替え先の住宅での借入額は6,000万円、金利は1%、返済期間は35年と仮定します。
譲渡所得が4,000万円の場合
通常の譲渡所得税額
4,000万円x20.315%=812万6,000円
3,000万円特別控除と10年超所有軽減税率の特例を適用した場合
譲渡所得税額 (4,000万円-3,000万円)x14.21%=142万1,000円。
812万6,000円-142万1,000円=670万5,000円の節税となります。
住宅ローン控除で控除される税額
一般住宅の場合で最大400万円、長期優良住宅の場合で最大480万円の節税となります。
この場合、3,000万円特別控除と10年超所有軽減税率の特例を適用したほうが節税額が大きいことがわかります。
譲渡所得が3,000万円の場合
通常の譲渡所得税額
3,000万円x20.315%=609万4,500円
3000万円特別控除を適用した場合
譲渡所得税額は3,000万円-3,000万円=0円のため、非課税となります。
つまり、609万4,500円の節税となります。
住宅ローン控除で控除される税額
一般住宅の場合で最大400万円、長期優良住宅の場合で最大480万円の節税となります。
この場合も、3,000万円特別控除の適用を受けたほうが節税額が大きいことがわかります。
譲渡所得が1,500万円の場合
通常の譲渡所得税額
1,500万円x20.315%=304万7,250円
3,000万円特別控除を適用した場合
1,500万円<3,000万円のため、非課税となります。
つまり、304.725万円の節税となります。
住宅ローン控除で控除される税額
一般住宅の場合で最大400万円、長期優良住宅の場合で最大480万円の節税となります。
この場合、譲渡所得税304万7,250円を先に支払い、住宅ローン控除を適用して所得税の還付を受けたほうが節税額が大きいことがわかります。
そのため、買い替え際の諸費用として税額を確保しておく必要があります。
「今」の節税か「未来」の節税か
譲渡所得の特例は「今」支払う所得税の節税、住宅ローン控除は「未来」の所得税の節税となります。
結果的にどちらの適用を受けたほうがお得なのかは、未来の所得や金利の変動など未来の不確定な要素よっても変わるがあります。
そのため、シミュレーション上は住宅ローン控除のほうがお得な場合であっても、定年が近い方や、将来の収入が不安定な方にとっては譲渡所得税の特例のほうがお得になる場合もあります。
まとめ
住宅に関する税制は難しいことが多いものの、国の政策としては国民の住宅取得を後押しする方針自体に変わりはありません。
どの税制優遇を利用するかで、資金計画が変わることもあるため、これから買い替えを後検討中の方は、資金計画についてもお気軽にご相談ください。
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