相続で不動産を所有することになった際、その不動産の購入価格がわからない場合もあるでしょう。
購入価格がわからないと、概算取得費によって譲渡所得税が高額になるリスクがあります。
そうならないようにするためには、購入価格を証明しなければいけません。
この記事では、譲渡所得税の計算方法や購入価格がわからない際に適用される概算所得費について解説します。
また、購入価格を証明できる資料がなかった場合の対策も解説しますので、ご参考にしてください。
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弊社へのお問い合わせはこちら購入価格がわからない不動産は「譲渡所得税」が高額になる?
不動産を売却する際には、譲渡所得税を計算し支払う必要があります。
まずは譲渡所得税とはなにか、またその計算方法について解説します。
譲渡所得税とは?
不動産を売却した際に発生する利益を「譲渡所得」といい、この利益にかかる税金のことを「譲渡所得税」といいます。
不動産を売却した際の譲渡所得税は、事業所得や給与所得などの所得と分けて計算します。
これを分離課税といい、計算方法は次で解説するので確認してください。
譲渡所得税の計算方法
譲渡所得は売却金額から取得費と譲渡費用を引いて計算し、以下の計算式になります。
譲渡所得=売却金額-取得費-譲渡費用
取得費は、不動産を購入した際の購入価格や仲介手数料などを合計した費用のことです。
譲渡費用とは、売却するために支出した仲介手数料や測量費、印紙代などの費用のことです。
そして、これらの取得費や譲渡費用を売却金額から差し引いて出た利益に税率をかけることで、譲渡所得税を算出することができます。
その際の税率は「長期譲渡所得」か「短期譲渡所得」によって異なります。
●長期譲渡所得とは、譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えている不動産の譲渡所得
●短期譲渡所得とは、譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年以下の不動産の譲渡所得
長期譲渡所得か短期譲渡所得かによって以下の税率になります。
●長期譲渡所得の場合:20%
●短期譲渡所得の場合:39%
不動産相続では被相続人の取得日を引き継げるため、ほとんどの場合は5年を超えているケースが多く、税率は20%になるでしょう。
したがって、以下の計算方法で算出することになります。
譲渡所得税=売却金額-取得費-譲渡費用×20%
購入価格がわからない不動産は「概算取得費」を用いて算出!
不動産売却をした際に利益が出た場合は、譲渡所得税を計算し支払う必要があります。
譲渡所得税を計算するには、取得費がわからないといけません。
取得費は、購入価格や仲介手数料などのことですが、昔のことということでわからない状況だと税金が高額になるリスクがあるのです。
そもそも取得費とはなにか、わからない場合はなぜ高額になってしまうのか、その仕組みについて解説します。
取得費について
取得費とは、売却した不動産の購入価格と仲介手数料など費用を合計したものです。
主には、土地や建物の購入費用になりますが、それ以外で取得費に入るものは以下になります。
●購入時に発生した仲介手数料
●購入時に支払った税金(登録免許税、印紙税、不動産取得税)
●登記手数料
●測量費
●工事費
●増改築費
これらの費用はすべて取得費として計算できます。
また、取得費の主な費用となる不動産の購入価格は、土地と建物に分けて計算しなければいけません。
土地は購入価格、建物は購入価格から減価償却費(経年劣化した価値)を控除した価格になり、以下の計算式です。
建物取得費=建物購入価格-減価償却費相当額
この際の減価償却費の計算方法は以下になります。
減価償却費=建物購入価格×0.9×償却率×経過年数
経過年数は築年数ではなく建物購入から売却までの期間のことで、6か月以上の端数は1年として計算、6か月未満の端数は切り捨てます。
また、償却率は建物の構造や用途によって異なり、建物が事業用に使用されていなかった場合は以下の数値になります。
●木造:0.031(耐用年数33年)
●鉄筋コンクリート:0.015(耐用年数70年)
※建物の耐用年数は1.5倍の年数で計算します。
次に、建物が事業用に使用されていた場合の償却率は以下になります。
●木造:0.046(耐用年数22年)
●鉄筋コンクリート:0.022(耐用年数47年)
概算取得費とは
譲渡所得税は「売却金額-取得費-譲渡費用×税率」となり、すべての費用を把握しておく必要があります。
売却金額や譲渡費用は、売却時の費用になるのでわからないことはありませんが、注意が必要なのは取得費です。
取得費とは、不動産を購入した際の購入価格や仲介手数料などを合計した費用のことで、多いほど譲渡所得が少なくなります。
このような売買代金を証明できる書類がなく、購入価格がわからない場合は概算取得費を用いて計算することになります。
概算取得費とは、売却金額の5%を取得費とみなしたものです。
実際の購入価格が売却金額の5%を下回る場合でも、売却金額の5%を取得費とすることができるので、その場合はお得になるでしょう。
しかしほとんどの場合、購入価格は売却金額の5%を上回るでしょう。
そうなると、実際よりも譲渡所得が大きくなり、高額の税金を支払うことになってしまうのです。
そのため、取得費を正確に把握することが重要です。
購入価格がわからない不動産を売却する場合の対策は?
不動産売却をする際に購入価格がわからない状態だと、概算取得費として計算されるので譲渡所得税が高くなる可能性があります。
そのため、取得費を把握しておく必要がありますが、必要な書類が見当たらず取得費がわからない場合もあるでしょう。
そのような場合、なにか対策はあるのでしょうか?
最後に、購入価格がわからない場合の対策について解説します。
対策①購入価格を証明できる書類をそろえる
取得費を証明する場合は、売買契約書や売買代金の領収書などが必要です。
しかし、それらが見当たらず購入価格がわからない場合の対策には、概算取得費で計算する方法があります。
ただしほとんどの場合、概算取得費で計算すると本来の譲渡所得税よりも高くなる可能性があるので、対策が必要です。
売買契約書や売買代金の領収書などがない場合は、以下の書類があれば証明できる可能性があります。
●通帳などの出金記録
●全部事項証明書(乙欄で抵当権の設定金額がわかるもの)
●金融機関との金銭消費貸借契約書やローンの償還表
●購入価格が記載されている当時のパンフレットや不動産のチラシ
●購入時の相手方とのやり取りをメモしたもの
これらの書類は購入価格を証明できる可能性があるので、あるかどうか探してみましょう。
対策②市街地価格指数で算出する
一般財団法人日本不動産研究所から出されている「市街地価格指数」を用いて、取得費を算出する方法もあります。
取得時の市街地価格指数によって、当時の不動産価格の平均値を知ることができるでしょう。
また、国税庁から出されている「建物の標準的な建築価格表」を用いて取得費を算出するのも1つの方法です。
まとめ
相続で不動産を所有しても、不要になるケースもあり売却を検討する方は多いでしょう。
そして、売却によって利益が出た場合は、譲渡所得税を支払わなければいけません。
その際には購入価格を把握しておく必要があり、もしわからない場合は概算取得費として計算され、本来よりも高額な税金がかかるリスクがあります。
概算取得費として計算する以外にも対策はありますので、これから相続した不動産を売却しようと考えている方は把握しておきましょう。
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