認知症の親の不動産売却をおこなって、介護費用に使いたいとお考えの方も多いのではないでしょうか。
この記事では、認知症の親の不動産売却はできるのかについてお伝えします。
さらに、認知症の親の不動産売却にともなうトラブルや解決するための成年後見制度についても解説しますので、お役立てください。
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認知症になった親の不動産売却ができない理由は?
不動産売却などをおこなうには「意思能力」が必要ですが、認知症により意思能力が十分ではないときは、法律上契約が成立したと認めないからです。
意思能力とは、自分がおこなうことによって生じる結果を判断する能力をいいます。
不動産の所有者が「自分の知らない間に財産がなくなった」「契約書にサインした記憶がないのに名義が変わっていた」などの不利益が生じるのを回避するためです。
同時に、意思能力の低下による契約の不成立は、親族間のトラブルを未然に防ぐ役割もあります。
同居や近くに住んで面倒をみている親族が、自分の都合の良いように所有者を誘導して、勝手な売買契約を締結しないようにできるからです。
認知症はどのような症状?意思能力は誰が判断する?
多いのはもの忘れですが、場所や時間がわからなくなったり、判断する力や話の内容を理解できなくなったりします。
年齢を重ねたことによるもの忘れとの違いは明確に区別できません。
そこで、前日の夕食のメニューを思い出せないときは年齢を重ねたもの忘れですが、食べたこと自体を忘れているときは認知による症状と判断するのが目安です。
売買契約に際し、高齢を理由に認知の症状があると決めつけることはできませんが、意思能力の有無は問題になります。
通常、所有者の意思能力の判断は仲介する不動産会社がおこないますが、本人との面談の他、依頼してきた方、その他の親族などにも直接話を聞くのがやり方です。
施設入所している場合は、施設の方とも面談するなど、手間がかかりますが、契約が無効にならないための大切なプロセスですので、省略することなく丁寧に対応します。
認知症以外で入院しているときに不動産売却はできる?
認知の症状がなく、病気や身体能力の低下によって入院または施設入所した場合は、意思能力の低下には該当しません。
判断する能力はあっても、契約書に自署できないときは、委任状を作成して売却することは可能です。
売却はもちろん、委任する方の選定などの判断も所有者がおこない、代理人が同意することが条件になります。
法的に有効な代理人でなければならず、子ども以外の第三者や司法書士などの専門家にも委託は可能です。
認知症になった親の不動産売却で起きるトラブルとは?
親の不動産を勝手に売却する理由とは?
認知症になると今までの生活が継続できないため、介護費用がかかるからです。
多くの場合、親だけの生活から子と同居するか、施設に入所します。
施設に入所すると、1か月の負担額の相場は、有料老人ホームが30万円、特別養護老人ホームは15万円です。
自宅で介護する場合は、6万円が目安になります。
介護費用は可能であれば本人の年金から充当しますが、不足額は家族の負担です。
平均的な介護期間は5年程度(2021年生命保険文化センター調査より)ですので、家族には大きくのしかかります。
そこで、空き家になった実家を売却して介護費用の足しにしようと考えて、売却するご家族が後を絶ちません。
不動産売却以外によくある認知症にまつわるトラブルとは?
不動産を売却する前に多いのが、親名義の預貯金を勝手に使ってしまうトラブルです。
子が何人いても、多くの場合、費用を負担するのは面倒をみている1人になります。
親の異変に気付いて医療機関への診察の申し込みをおこない、受診を介助して診察結果を受け取り後、介護サービスの申請などが認知症の公的介護保険の利用には必要です。
同居または近くに住む子や親族が対応することになり、介護が始まるまでの費用負担も相当な額になります。
そこで、本人が負担すべきと考えて、預貯金を引き出す事案が多発しがちです。
さらに、施設に入所後も、介護の方針の相談や体調不良の際の医療機関への受診など、預けたら終わりではありません。
介護はお金に換算できない負担も多くあります。
しかし、亡くなった後の相続では介護は評価の対象にならず、面倒をみなかった兄弟も同じ相続額になるため不公平に感じることも預貯金を勝手に使う要因です。
引き出した預貯金のトラブルでは、リフォームや不動産の購入に利用する事案もあります。
介護のためのリフォームや物件購入が目的ですが、引き出した預貯金を本人名義の工事や物件にすれば問題にならないというのがその理由です。
しかし、意思能力のない人の契約は、どのような内容であっても成立しないため、トラブルになります。
預貯金の引き出しや実家の売却などが、相続の権利がある方に露見すると相続の決着が困難になる点も、認知症に関係するトラブルです。
認知症になった親の不動産売却をおこなうための成年後見制度
成年後見制度とはどのような制度か?
成年後見制度は、認知症などによって判断する能力が十分ではない方(被後見人)を補助する方(後見人)が助ける制度になっています。
成年後見制度は、内容が異なる任意後見制度と法定後見制度の2つです。
任意後見制度では認知症になる前に本人が後見人を選定します。
もう一方の法定後見制度では、認知の症状が出てから、本人や検察官、市区町村長の申し立てにより家庭裁判所が選定する点が違いです。
後見人になることができるのは?
申立書に記載する後見人の候補は、子や配偶者の他、弁護士や司法書士などの専門知識を有する方や、福祉関係の法人や社会福祉士などです。
実際に、家庭裁判所が後見人に選定するのは、弁護士や司法書士などの専門職や福祉関係の方や法人が多く、子や配偶者がなることはほとんどありません。
子や配偶者は、本人と利益が合致しない場合があることが理由です。
親族が後見人になったときは、専門職の方を後見監督人に選任することもあります。
選任後、後見人が被後見人に代わってできることは、本人名義の財産管理です。
この他、不動産売却などの契約もできますが、本人の利益になる場合が条件になります。
本人の利益になる場合とは、介護費用や施設利用料、医療費の支払いに充当するなどです。
売却が可能になるのは、維持管理業務に費用がかかるときや、建物の老朽化により周辺に迷惑をかける状況になっているときが該当します。
成年後見制度を利用した不動産売却の流れ
後見人は、被後見人の代理として不動産会社に販売活動を依頼する契約を締結します。
居住用の物件であれば、事前に裁判所に申請をおこなって許可を受けなければなりません。
この場合の居住用物件とは、施設に入所する前に住んでいた建物の他、退院後の居住用に確保していた物件も入ります。
裁判所の許可を受けないでおこなった売買契約は無効になるため、注意しましょう。
とはいえ、費用の捻出を急ぐ場合は、許可申請の後、許可を待たずに販売活動をすることも可能です。
その際は、売買契約に「裁判所の許可が下りたときのみ有効」などの条件を付けた契約にします。
決済には必ず後見人は同席し、引渡し完了後、すぐに司法書士が手続きをおこなって所有権の移転登記を済ませて完了です。
まとめ
認知症になった親の不動産売却は、所有者に代わって子が契約することはできません。
しかし、介護費用と精神的な負担は大きく、親族間のトラブルになってしまいます。
そこで、成年後見制度を利用して不動産を売却し、介護費用の負担軽減を目指しましょう。
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