不動産を売却して利益(所得)が生じると、翌年利益に対して税金がかかります。
今回は売却後にかかる、住民税について解説していきます。
住民税とは何か、いつ申告していつ支払うのか、計算方法、節税ポイントについてもご紹介していきます。
売却タイミングによっては課税される税率が変動する可能性があるため、不動産売却前に計算方法などを知っておきましょう。
それではまず、住民税とは何かご説明していきます。
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住民税は、その地方に住む個人にかかる地方税のことで、前年の所得金額に対して課されます。
会社員などで給与を得ている場合は、給与から前年の住民税が毎月天引きされます。
ただし、不動産売却で給与以外に所得が生じた場合は、自身で確定申告をして売却から得た利益に対して税金を納める必要があります。
譲渡所得
不動産売却で得た利益は、譲渡所得と呼ばれます。
譲渡所得は給与とは別に税金計算されます。
給与などの所得税は所得が上がれば上がるほど税率が高くなる累進課税が適用されますが、譲渡所得は固定の税率が決められています。
一般に不動産売却金額は高額になると思いますので、給与所得と合算して累進課税を適用してしまうと支払う税金があまりにも高くなってしまいます。
そのため、給与所得と譲渡所得は分けて課税(分離課税)されます。
譲渡所得と所有期間
譲渡所得は以下の計算式で決まります。
「譲渡所得=譲渡価格(不動産売値)ー取得費(不動産購入代金など)ー譲渡費用(仲介手数料など)」
この計算式からわかるように、不動産売却代金がそのまま譲渡所得になるわけではありません。
不動産購入代金などの取得費と売却に際してかかった譲渡費用を差し引いた金額に税金が課税されることになります。
※建物を売却した場合は、実際には取得費から減価償却費を差し引いて計算しますが、少し複雑になるので今回はわかりやすくするために減価償却費については割愛します。
「住民税=譲渡所得×税率」
税金計算で適用される税率は、不動産の所有期間の長さで変動します。
短期譲渡所得と長期譲渡所得
不動産の所有期間が5年以下で売却した場合、短期譲渡所得となります。
5年以上10年未満で売却した場合、長期譲渡所得となります。
短期譲渡所得は所得税率30%・住民税率9%(合計税率39%)、長期譲渡所得は所得税15%・住民税率5%(合計税率20%)が適用されます。
つまり所有していた期間が長いほうが、売却したときの税率は低くなります。
一つ注意が必要なのは、所有期間の判断基準は売却した年の1月1日の時点であることです。
たとえば、2017年5月31日に購入した不動産を2022年6月1日に売却したとします。
実際の所有期間は5年を超えていますが、売却年の1月1日が基準になるためこのケースでは所有4年(2022年1月1日では所有4年7か月)となり短期譲渡所得税率が適用されてしまいます。
短期か長期かで税率がかなり変わってくるため、税率を加味して売却タイミングを考える必要があります。
住民税額が決まる時期
続いて、譲渡所得の申告時期と実際に税金が上がる時期についてご説明していきます。
いつ申告するのか?
申告時期は確定申告の時期になります。
確定申告は、不動産を売却した翌年の2月16日~3月15日までの間になります。
税金が上がるのはいつ?
確定申告をすると、普通徴収を選択した場合、売却した翌年の5月以降に自治体から住民税の納税通知書が届きます。
支払いタイミングは、6月・8月・10月・翌年の1月の4回の分納、または1回で全納のどちらかになります。
給与所得からの天引きを希望する場合は、確定申告の際に特別徴収を選択します。
ちなみに譲渡所得にかかる所得税の納付タイミングは、確定申告時になります。
先に所得税を納付し、あとで(5月以降)住民税を支払うことになります。
住民税の計算方法
最後に税金の具体的な計算例と、節税するためのポイントについてご説明していきます。
ケース別シミュレーション
はじめの項目で触れたように、「住民税=譲渡所得×税率」で税金計算ができます。
そして、「譲渡所得=譲渡価格(不動産売値)ー取得費(不動産購入代金など)ー譲渡費用(仲介手数料など)」となります。
それでは、ケース別で税金計算をしていきます。
2500万円で購入した不動産を3000万円で売却した場合
所有期間4年(税率39%:内住民税は9%)、譲渡費用200万円であったとすると以下になります。
{3000万円(不動産売値)ー2500万円(不動産購入代金)ー200万円(譲渡費用)}×39%=117万円(内住民税は27万円)
同じケースで所有期間のみ9年であった場合(長期譲渡所得適用)は以下になります。
{3000万円(不動産売値)ー2500万円(不動産購入代金)ー200万円(譲渡費用)}×20%=60万円(内住民税は15万円)
所有期間が短期と長期では、利益に対してかかる税金が2倍近く変わります。
2500万円で購入した不動産(マイホーム)を3000万円で売却
上の例ではマイホームではない不動産を想定して計算しましたが、売却する不動産がマイホームであった場合は計算が変わります。
マイホームを売却した場合の特例(居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例)が適用されると、3000万円がさらに控除(所有期間は9年、譲渡費用200万円と仮定)されます。
{3000万円(不動産売値)ー2500万円(不動産購入代金)ー200万円(譲渡費用)ー3000万円}×20%=-540万円(実際には0円)
3000万円特別控除を適用すると計算上はマイナスになりますが、利益は0円となりますのでかかる税金も0円になります。
購入代金のわからない不動産(マイホーム)を3500万円で売却
自身で不動産を購入するなど購入代金が判明している場合は上記のように計算をしていくことができます。
しかし相続などで取得した、購入代金が不明な不動産を売却する場合は、売却額の5%が不動産購入額として計算されます。
このケースの不動産購入額は、3500万円×5%=175万円として計算されます。
所有期間は9年、譲渡費用200万円と仮定すると、計算額は以下になります。
{3500万円(不動産売値)ー175万円(不動産購入代金)ー200万円(譲渡費用)ー3000万円}×20%=25万円(内住民税は6万2500円)
このように購入代金がわからないと控除される金額が低くなることが多いので、マイホームの特別控除を利用しても納税額が発生する可能性があります。
節税するためのポイント
以上、ケース別シミュレーションをおこなってきましたが、節税するポイントとしていくつかまとめます。
売却タイミングを検討する
所有期間が短い短期譲渡所得と長い長期譲渡所得では、かかる税率がかなり変わってきます。
所有期間が5年未満の不動産を売却しようとしているならば、売却タイミングを検討してみるのも良いでしょう。
3000万円特別控除が利用できるか確認する
マイホームの売却であれば、3000万円特別控除を適用できる可能性があります。
このような控除が利用できれば、利益に対する納税が0円になる場合もあります。
購入額が確認できる書類を探す
購入金額が不明の不動産の場合、売却額の5%が購入代金とみなされます。
実際の購入金額より低く見積もられるケースが多いので、結果として納税金額が大きくなってしまう傾向があります。
不動産売買契約書や通帳の記帳履歴など、証明できそうな書類を探しておくほうが良いでしょう。
まとめ
不動産を売却すると翌年の一度だけ、所得税や住民税が上がる可能性があります。
所有期間や不動産購入額が判明しているかなどで、納税額が変わることがありますので売却前に確認しておきましょう。
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